エピソード9 後悔、そして

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蟻塚の三人は大層驚いていた。 「お前ェ、まさか使えるのかァ?」 「ええ」 リリア様は、昆虫憑依(エントマイズ)を体得していたのだ。 僕がどれだけ戦いの訓練をしようと、あの方には勝てなかった。 それだけの強さがあったのだ。 リリア様曰く、『野蛮で醜い能力(ちから)』。 一度使うと頭に血が昇り易くなり、暴走してしまうこともしばしばあったが…… 「私の昆虫憑依(エントマイズ)刺針蟻(パラポネラ)。私の命が欲しくば、あなた方にも命を懸けていただきましょうか」 温厚な者ほど、怒らせれば怖い。 この方は正にそれを体現する様なお方だった。 ──パラポネラ。 アリ科・サシハリアリ属。 蟻は小さな体で群れをなして行動する種が多いのですが、パラポネラは蟻の中では規格外に大きく、単独での行動を好みます。 闘争心が非常に高く、巣の上に外敵が来ようものなら、独特の金切り声を上げて向かっていくのです。 彼等の武器は二つ。 大顎による攻撃は噛み砕く力が非常に強く、そして尻には大きな針が光ります。 針を通して注入される毒はスズメバチのそれよりも凶悪とされ、まるで銃火器で撃ち抜かれた様な激しい痛みが、24時間続くとも言われています。 『弾丸蟻(ダンガンアリ)』の別名を持つ恐ろしい凶戦士の圧力(プレッシャー)は凄まじく、たった一匹のパラポネラとの交戦を避けるために、軍隊アリの群れが遠回りをするとも言われているのです──
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