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蟻塚の三人は大層驚いていた。
「お前ェ、まさか使えるのかァ?」
「ええ」
リリア様は、昆虫憑依を体得していたのだ。
僕がどれだけ戦いの訓練をしようと、あの方には勝てなかった。
それだけの強さがあったのだ。
リリア様曰く、『野蛮で醜い能力』。
一度使うと頭に血が昇り易くなり、暴走してしまうこともしばしばあったが……
「私の昆虫憑依は刺針蟻。私の命が欲しくば、あなた方にも命を懸けていただきましょうか」
温厚な者ほど、怒らせれば怖い。
この方は正にそれを体現する様なお方だった。
──パラポネラ。
アリ科・サシハリアリ属。
蟻は小さな体で群れをなして行動する種が多いのですが、パラポネラは蟻の中では規格外に大きく、単独での行動を好みます。
闘争心が非常に高く、巣の上に外敵が来ようものなら、独特の金切り声を上げて向かっていくのです。
彼等の武器は二つ。
大顎による攻撃は噛み砕く力が非常に強く、そして尻には大きな針が光ります。
針を通して注入される毒はスズメバチのそれよりも凶悪とされ、まるで銃火器で撃ち抜かれた様な激しい痛みが、24時間続くとも言われています。
『弾丸蟻』の別名を持つ恐ろしい凶戦士の圧力は凄まじく、たった一匹のパラポネラとの交戦を避けるために、軍隊アリの群れが遠回りをするとも言われているのです──
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