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しかし少女は、たった今入店して来た客の姿を確認すると同時に、異様な雰囲気を感じとりました。
来客の男は村に住んでいる誰かではなかったのです。
背中に鞄を担ぎ、茶色のマントを羽織った金髪の青年で、額には特徴的な形をした角。
妖精達の住まうこの世界『インセクティア』においては、角や触角の生えている者が特段珍しいという事はありません。
ですが少女はその男と目が合うと、視線を逸らす事が出来なくなりました。
何故なら……
青年は暗い表情で、少女を見下ろしていたからです。
──ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!
強盗。
それが少女の男に対する第一印象。
彼女は不安を隠せませんでした。
お父さんは今、近場の森へと薬草を採りに出かけていて、店内には自分と青年だけ。
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