エピソード1 旅人

4/61
前へ
/1248ページ
次へ
──ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ! 青年が入って来た途端に鳴り始めた謎の音のようなものも、少女を圧倒します。 「あ、あの……」 あなたは強盗なんですか? と訊く訳にもいかず、少女は黙ったまま、涙目で青年を見つめ続けました。 「と……ッ!」 ──ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ! 今まで威圧感たっぷりにこちらを睨みつけていた青年が、ようやく一言発します。 無論、彼が何を伝えたかったのか、少女には見当がつきません。 「と……?」 少女は、恐る恐る訊き返しました。 すると青年の眉間には、更に皺が寄ります。 正に鬼の形相。どうして自分がこんな目に遭わなければならないのか、少女は何が何だか分からなくなりました。 やがて青年は、この世の終わりを目撃した隠遁者の様な表情で、もう一度声を発します。
/1248ページ

最初のコメントを投稿しよう!

70人が本棚に入れています
本棚に追加