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プロローグ
「ハァッ……ハァッ……」
暗い森の中、冷たい雨が降っていた。
ろくな衣服も身につけていない状態で、自分は『何か』から逃げている。
何から逃げているのか。何故追われているのか。奴等の正体は。
……それは、分からない。
そもそも自分が何者で、今までどんな暮らしをしていたのか。
自分のどんな行動が、彼等の逆鱗に触れてしまったのか。
それさえも、思い出す事が出来ない。
でもこれだけは、ハッキリしている。
追跡してくる者達が、背後から矢のような物を次々と浴びせかけて来ていた。
奴等は自分を殺す気だ。殺さずとも、危害を加えようとしているのは間違いない。
立ち止まれば死ぬ。しかしこのまま進み続けても、終わりのない闇が体を包み込むだけだ。
死にたくない。夢なら早く終わって欲しい。
本能的な恐怖が素足を動かし続ける。
しかし、運命は残酷だった。
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