~傘~

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 小さなビニール傘を 二人分け合いながら  歩く遠回りした 線路沿いの帰り道    少し君の方へ 傾けながら歩くと   すぐに気付いてまた 元に戻そうとした    この雨が止んでしまったら 僕らの距離は元通り  せめて「また明日」を言うまでは 止まずにいてくれないか…    電車の音にかきけされて 伝わらなかった気持ち  今なら言えるだろうか たった一言の言葉を  明日もしまた雨が 降ったらこの傘の中で  言おう“君が好きだよ”と まっすぐな気持ちを伝えよう タオルをくるんで 逆さに吊したそれに 笑顔を描き足した 君を想いながら  もし傘の魔法がなかったら また言えずに居るのかな? 大事なのは“君に伝えること” ただそれだけのはずなのに… 言葉にすると離れてく気がして 言えないまま時間だけが過ぎた でも無駄じゃないよ 色んな君が見れたから 明日もしもう雨が 上がっていてもこの気持ち 言おう「君が好きだよ」と 飾らずに一言 伝えよう 間奏 電車の音に 負けない様にと 固く拳を握って いつもの待ち合わせ場所 駅の近くの公園へ 少し湿った奥のベンチに 座るとすぐに  雨は止んだはずなのに 傘をさした君が来て… 左手に傘 右手に君の手 見上げれば澄んだ青が 言の葉はゆらり揺れて 君は少しはにかんだ  傘はもういらないけど まだこの距離で居たくて  もう少しだけさしていよう もう少しだけ… 小さなビニール傘を 二人分け合いながら 歩く遠回りした 線路沿いの帰り道
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