神様の前では誓えない

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 「お帰り。今日は遅かったね」  脱衣所から顔を出した直輝は、タオルで髪の毛を乾かしながらへらへらと笑った。  「ただいま。今日こそは定時で帰れると思ったのにさ、終業5分前にクレームの電話がかかってきちゃって。そこから延々と貴重なご意見を聞き続けてもうクタクタ」  私は玄関に入るなりパンプスを脱ぎ捨てながらそう言った。鞄を床に下してストッキングを脱ぎ、髪の毛を縛っていたゴムもその場で外して靴入れの上に置いた。  「お疲れさま。未結ちゃん遅くなりそうだなと思って夕飯作っておいたから。夕飯っていってもいつものカレーだけど」  「ありがとう。今から料理しろなんて言われても無理だもん。カレー大好き!」  リビングにたどり着くまでの間に私はぽいぽいと服を脱いでいく。家に帰ってきたらこんな窮屈なもの一秒でも早く脱ぎ捨てたい。  「ほら、掛けとかないとスーツが皺になっちゃうでしょう」  私が脱ぎ散らかした服を直輝が拾い集めてくれた。そんな直輝を尻目に、私はYシャツ一枚という姿で冷蔵庫から缶ビールを取り出し、一気にそれを飲み干した。  「どうせまた面倒臭いって騒ぐんだから、先にお風呂入っちゃったら?髪の毛乾かすの手伝ってあげるから」   そう言いながらへらへらと笑う直輝を見て、きっと私にはこの人しかいないんだろうなと思った。
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