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「最近この曲よく聞きますよね。私、好きなんですよね。この曲」
空港に向かうタクシーの中で、運転手は私にそう話しかけた。
僕にとって何が一番幸せかなんて
それを決めるのは僕自身だよ
僕にとって君が全て
それは私が直輝の前から姿を消した後に作られた曲だった。直輝が動画サイトにアップロードした曲はSNSを通して爆発的にヒットし、すぐにCDとして販売された。ランキング10位以内どころか、CDの販売枚数は歴代の所属アーティストの中でも過去最高を記録し、それと同時に過去に出した曲にも日が当たるようになった。直輝の曲はようやく評価されるようになったのだ。
直輝は優しいから、きっと私があなたの為に身を引いたと思ってるでしょうね。だけど、違うんだから。私は直輝の曲が好き。私は歌を捨てたあなたとの幸せと、あなたの曲とを天秤にかけたの。私は直輝に歌い続けてほしかった。例えそれが、あなたを不幸にしてしまうかもしれないとわかっていながらね。私は直輝よりも直輝の作る曲を選んだの。酷い女でしょう?だからもうそんな顔しないでよ。またいつもみたいにへらへら笑ってよ。お願いだから、そう思ってよ。
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