第七章 ヴァンパイアの秘密

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「――ッ、ちょ、とまっ、」 レフは優しく吸血痕を舐め、一度噛んだ場所に再び歯を突き刺し、血を啜っていく。 行為自体はヴァンパイアの男とも、自分とも変わらない。それなのに、どこか異様な感覚を覚えている。 アキトの意志とは関係なしに、恐怖とは違う震えを示し、痙攣するかのように小さく震える。それに加え吸血されて、身体が溶けてしまうかのような、そんな心地良さを感じていて、鼓動が高まり吐息がもれる。 ただ血を吸われる気持ち悪い感覚ではない。気持ち悪いどころか、気持ちが良いと言っていい程にレフに吸血されているのは心地良いのだ。 「なんだ、これ……」 そういえば、あの時の祭司がヴァンパイアは進化の果てに、相性の良い相手との間で媚薬的効果を齎すと話していた。人間に抵抗されない為と言っていたが、そうか。これが、その媚薬的効果と言われるやつなのだろう。 確かにこれは抵抗のしようがない。レフの前にも血を吸われてるんだ。尚のこと、抵抗なんて出来る訳ないだろう。 そうでないにしても、これでは気持ちよくて抜け出せない。 ――まあいいか。もとよりヴァンパイア化させてしまった責任は取るつもりだったんだ。もしここで吸い殺されても、なんの文句も言えない。この人に吸血されて死ぬなら、それはそれで悪くないだろう。 身体に力が入らない状態ではあったが、ゆっくりと左腕を上げた。その左腕をレフの頭の上まで持ってけば、そこで力尽きたかのようにアキトの意識は途絶えてしまった。
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