第七章 ヴァンパイアの秘密

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「なんですか? これ」 ベッドから移動し、レフにヴァンパイアの男、そしてミハイルが座る場所にへと移動をする。そこには、どこの部屋とも変わらない豪華な長テーブルがあり、テーブルを挟むようにふかふかのソファが二つ配置されている。それだけなのにやけに豪華な印象を与えてくるのは、やはり素材そのものが違うからだろうか。軍事施設と同じ木材を使用しているにしても、恐らくはそういった違いや、装飾品の一つ一つで豪華さを演出されているのだろう。 そんな豪華さに呆気に取られながらも、アキトはレフの隣に腰掛け、テーブルの上に乗っているティーカップを見て、そんな言葉を漏らしていた。 「おやアキトさんご存知ないんですか?」 アキトの言葉に反応を示したのはミハイルだ。天使のような癒される微笑みを浮かべ、地下牢での出来事がなかったかのような態度である。 「いや、物は分かるんですけど、その……独特な頂き方だなと」 用意されている紅茶は匂いを嗅ぐ限りでは、恐らくアッサムの紅茶を淹れているのだろう。それはいい。――問題は、その紅茶と一緒にレフがジャムを口にしていることだ。 紅茶と果実で作られたジャムを同時に口にする。そんな独特な飲み方をしてるのを見たのは今が初めてだった。いくら甘党だからと言えども、これはやり過ぎなんじゃないか、そう思わずにはいられなくて、怪訝な顔をしてレフを見てしまっていた。 「知らないお前が凄い。そもそも、こちらの国では基本の嗜みがこれだ。お前みたいにハチミツを入れる方がどうかしてる」 視線に気づいてか、レフは目を合わせることなく言葉を放つ。どうやら機嫌が良くなってきた兆候なのか、ほんの少し物腰が柔らかくなっている。 レフの言葉は当然アキトに向けられたものであったが、その言葉に反応を示したのは意外にもミハイルだった。 「えっ、ハチミツですか……? それはまた新しい。どんな味なのか賞味してみたいものですね。ねぇ? ルシフェル様」 「ハチミツは嫌いだ。理解して私に問うお前も嫌いだ」 どこかほのぼのした空間が気持ち悪い。ルシフェル様と男を呼び、アキト達とも変わらず接するミハイル。この天使と同じ名を持つミハイルはなんなのだろう。 ヴァンパイア側としてなのか、それとも人間側なのか。どちらの存在としてここにいるのだろうか。
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