第七章 ヴァンパイアの秘密

29/46
前へ
/245ページ
次へ
「ミハイルさん、は……ヴァンパイアなんですか?」 「えぇ、そうですよ」 アキトは戸惑いながらも、胸の内に宿った疑問をミハイルにへと訪ねてみた。ミハイルはその問いになんの疑問を持つことなく肯定し、その姿に「やっぱり」と言葉をアキトは吐いていた。 そしてアキトは紅茶を嗜むレフにへと視線を向け、今度はレフにへと質問をする。 「レフ大尉はミハイルさんがヴァンパイアだって、知ってたんですか……?」 「なぜ俺に訊く」 せっかく機嫌良くなってきたところだったのだが、アキトがそう質問をしてしまえば地雷を踏んでしまったのか、ギロリと冷たい眼差しで睨まれてしまう。 だがアキトは臆することなく、 「二人はお知り合いだったみたいなので」 レフは会話を続けながらも、ジャムを食べる行動を止めなかった。ジャムを口にしては紅茶を飲む。そんな動作を繰り返していたが、アキトの言葉でレフはジャムを掬うためのスプーンを置いた。 そしていつもの様に長い脚を組み、両手を合わせて指を交差させる。ちらりと視線を向けられたが、レフの視線はミハイルにへと向き、イラだった様子で、 「知るか、こんな奴のこと。前々から薄気味悪い奴だとは思っていたが、ヴァンパイアだと知れば納得だ」 悪態を吐くかのように、ミハイルに向けそう言葉を口にした。その声色は敵意剥き出しで、ミハイルにだけではなく、ヴァンパイアの男にも向けられたものだというのはすぐに察した。それに気づいたのはもちろんアキトだけではないだろう。 だがそれに気づいていながら挑発に乗るように、 「っはは、なるほど。貴方、私のことをそういう風に見てたんですねぇ。ただ単純に、ソフィア様と親しい私が妬ましいんだとばかり思っていましたよ」 「は……? 妬む? 俺が?」 ピシッ―――っと、まるで空間にヒビが入ったかのように、レフの纏う空気が一瞬にして変わった。思わず距離を取ってしまいたくなるような圧力とトゲトゲしさを隣から感じる。 しかし怖いもの見たさというのがアキトの中には存在しており、おそるおそるとその顔を伺ってみれば、酷くご立腹だというのは理解せざるおえない。 眉間にシワを寄せ、鋭く目を細めている。それでも横顔が綺麗だと感じるのは、その敵意である眼差しが自分に向けられているものではないからだろう。 「おや違うんです? 貴方からすればソフィア様は命の恩人でしょう? それに貴方がソフィア様に好意を抱いているというのは明らかですし、身を削ってまで軍に居座る理由はただ一つ。ソフィア様の体を治したいのでしょう? せめてもの罪滅ぼし、というやつですか?」 「言わせておけばベラベラと。相変わらずよく喋る男だな」
/245ページ

最初のコメントを投稿しよう!

58人が本棚に入れています
本棚に追加