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バルコニーもまた豪華なもので、外を一望しながらお茶が出来るよう、丸テーブルに椅子が用意されている。
だがアキトは椅子に腰掛けることなく、肌を撫でるような冷たい風に当たりながら手摺りに掴まり、バルコニーから外を眺める。
手摺りはキンキンに冷たくなっていたが、手から感じるその冷たさが心を落ち着かせようとしてくれた。
そんな冷たさに比べ、城下町はとても賑わっている。あの場にソフィアがいなくとも、パレードは賑わいを見せ、それを知らせる為かのように紙吹雪が沢山舞っている。それだけに留まらず、色とりどりのゴム製で作られた、中に空気を入れることによって膨らむ、風船と呼ばれるものが重力に逆らうかのように、城下町から空へ飛んでいく。それは鳥が羽ばたいている姿に似ていて、あの風船に掴まって空は飛べるだろうかと、そんな少年じみた考えを浮かべてみた。
「信楽アキト、聞きたいことがある」
城下町を眺めながら、心を落ち着かせようと励むアキトの邪魔をするように、一緒に眺めていたレフが突然言葉を掛けてきた。
「空気読んでくださいよ。僕は今、話に集中できる状態を取れません」
イラ立ちを見せるようにアキトが話して目を合わせれば、レフはまた目を逸らす。その態度にアキトのイラ立ちは増すだけで、それを隠しもせずに、
「今は無理です。アイツのことばっかりでイライラしてるんですよっ、気持ち悪いんですッ」
――ああ、上官に対して言うことじゃない。これじゃあもう、レフには嫌われてしまうだろう。
「それでも、俺は今知りたい」
ハッキリと言葉を口にするレフはアキトの話など無視で、当然イラッと来はしたものの、レフのサッパリとした態度に不思議と笑えてきて、なんだかイライラしてる自分がアホらしく思えて、気づけば気持ち悪さなんてものは消えていた。
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