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「レフ大尉だって無理しないでください。もう少し僕を頼ってください。利用し合う関係だったとしても、僕にとってはそれだけじゃないんです。僕は貴方の力になりたいのに、貴方は全部一人で抱え込んで僕を頼ってくれない。僕じゃ……貴方の力にはなれないんですか……?」
「……手伝ってくれるのか?」
気恥しさなんか忘れて饒舌に話すアキトに呆気に取られながらも、珍しくレフはキョトンとし、呟く様に話した。それに対しアキトが顎を引いて答えを返せば、レフは差し出すようにアキトに向け手を出す。その手をアキトが握れば、レフはぎゅっとアキトの手を握り、それを引いた。
すれば引かれるままにアキトは立ち上がり、怪訝な表情を浮かべるレフの顔を正面から見ることになり、残っている気恥しさのせいで視線を逸らしてしまった。
だがレフは気にする様子を見せず、
「……なぜ?」
「僕が手伝いたいから、そんな理由じゃ駄目ですか?」
「俺は……何も返せない。お前に手伝って貰っても、何もしてやれない。それでもか?」
戸惑い、だろうか。まるでアキトの放った言葉が信じられないと言わんばかりの表情を浮かべ、真っ直ぐにアキトを見据えて話す。そんなレフの反応に逆に疑問を抱いてしまう。見返りが欲しくて言っていると、そう思われているのだろうか。
「別にレフ大尉からの見返りが欲しくて手伝う訳じゃありませんよ?」
「いいのか……? 俺はお前に何もしてやれないのに、それでもお前は俺を手伝ってくれるのか?」
「だから、そう言ってるじゃないですか」
不思議でならない。そう言わんばかりの表情に言葉。やはり見返り欲しさに言っていると、そう思われていたのだろうか。それとも、レフの周りがそういう人間ばかりだから、そう思ってしまうのか。
「変な奴だ変な奴だとは思っていたが、ここまでの奴だったとは」
挙句の果てにはこの言葉だ。まるで手伝うと言っているアキトの方がおかしいみたいな扱いである。
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