第七章 ヴァンパイアの秘密

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「そういえば、まだアキトにも紹介してなかったな」 男が突然そう話した。当のアキトは空のティーカップに紅茶を注ごうと、ティーポットにへと手を伸ばしていた。男の声に思わず顔を上げれば「してないよな?」と確認された為「そうですね」なんて適当な言葉を送りながらも、なんの紹介だろうと考えながら、同じく空になっているレフのティーカップに手を伸ばす。 「名はルシフェル。私は反乱を起こそうとしてる同族達を止める為に動いてる。ミハイルの事は二人とも把握してると思うが、ヴァンパイアでありながらソフィアの警護に就いて貰っている」 「その反乱ってのは?」 質問をしたのはレフだ。アキトの行動に気付いてか、ティーポットの傍に置いてある小皿と、瓶にぎゅっと詰まったジャムを手に取り、それをスプーンで掬って仕分け始める。 「ヴァンパイア狩りが始まったのと同時期に、ヴァンパイア達の間でも亀裂が生まれた。その亀裂を生んだ原因は私と、一人の人間だ」 ルシフェルの話を聞きながら、レフはアキトが淹れた紅茶に口をつける。その動作を眺めるように見ていれば、その視線に気付いたレフはアキトの分もジャムを用意し「先にジャムを口にしてから飲むんだ」と教えてくれる。続けて「砂糖はいらないからな」とも。 そんなアキトとレフのやり取りを見てか、「あの」と、ミハイルが言葉を零した。自ずと視線はそちらに向けられる。 「ルシフェル様、話の途中にすみません。一品だけ、スイーツを持ってきてもいいでしょうか。ロシアンティーに良く合うんです。私も最近はゆっくり出来る時間がなかったので、物足りなくて」 「……ようやく話を進めれるこの状況でか?」 「あ、話は進めて貰って大丈夫なので。それと、ソフィア様の様子を少しだけ伺いにも」 ミハイルの言葉にルシフェルは明らかに嫌な顔をする。ルシフェルに頭が上がらないらしいミハイルは困ったような顔をしながらも妥協はしたくないのか、懇願するように両手を合わせ訴えかけている。 そんなミハイルに対しルシフェルはため息を吐いたが、仕方なく了承の言葉を口にすればミハイルは嬉しそうな顔をして、感謝の言葉を述べながら部屋を後にする。 それを見送ったアキトはミハイルがいなくなってから、 「スイーツって……?」 「さぁ。ケーキの類じゃないか? それより話の続き」 ミハイルと知り合いであるレフに訊いてみたが、さして興味が無いのか軽く無視をされた。 「お前達も話を聞く準備は出来たのか」 溜息混じりのルシフェルの声は、ミハイルだけではなく、話を聞きながら紅茶を用意していたアキトにも向けられていたようだった。
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