第七章 ヴァンパイアの秘密

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「まだ聞いてなかったな。アキト、記憶の中で何を視た……?」 自身の中で結論を出し、決めつけるようにルシフェルを敵だと判断したアキトに、ルシフェルはミハイルを相手にするのと同じようにアキトにへと訊く。 アキトはルシフェルのその質問に、 「何を視たって訊かれても……。僕だってハッキリと視た訳じゃないし、どちらかと言えば聞いたが近い」 曖昧な返事を返す。事実だ。この言葉にはこれといった意味は無い。ここで相手の腹を探っても仕方ないだろう。 「どちらでも構わない。私達共存派は少数だ。その分行動しやすいという利点もあるが、ミハイルを使っても情報の入手が困難だ。だからこそ、お前のその力が必要だった」 虚勢を張るように強気な態度を見せるアキトとは違い、ルシフェルはどこか下からくる感じで、自身の状況に多少説明を加えながらアキトの答えを望む。 それに対しアキトの気分はよくない。敵でいなきゃいけない。復讐相手だと認識していなきゃいけない。そう結論を出したばかりだというのに、当たり前に会話をされていれば、敵だというのを忘れてしまいそうになる。 しかし、そんなことでアキトも冷静さを失う男ではない。ヴァンパイアとの遭遇や、軍部に配属される前や。色んなことがアキトの人生に糧を与え逞しく育てている。答える前にアキトもまたこの男に、復讐相手であるヴァンパイアの王ルシフェルに訊かなきゃならないことがあった。 「――視たものを答える前に、僕の質問に答えて欲しい。この視る力ってのは……? 今まで吸血してきた時はこんなこと起こらなかった。それなのに突然……」 「あぁそうか。人間は私達の能力を知らないのか。それは――」 「まてまてまて、なんの話をしてる。俺を差し置いて話を進めるな」 割るようにレフがルシフェルの続きの言葉を遮った。表情を伺ってみる限りでは変わらない冷静な顔をしているが、深紅の瞳には若干ではあるが怒りが宿っている。 それに気づいたアキトは一息つくような息を吐き、自身の緊張を解いてから、続きの会話をすることを止めた。そしてレフにへと体をむけて、今までの経緯を話すことにする。 アキトとルシフェルの間では、トントン拍子に話が進んでいた。だがレフが気を失っていた時間、当然ながらレフはその間の出来事を知る由はない。何かを記憶していたとしても、その記憶は曖昧なもので、理解出来るほどのものではないだろう。 勝手に話を進める前に、まずはレフに現状の説明をしておいた方が良さそうだ。知恵も借りられる。ここは存分に大尉まで上り詰めた力を発揮してもらうべきだろう。
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