第七章 ヴァンパイアの秘密

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「すまない、言い合いは後でしてくれ。話を戻すが、アキトが吸血することによって視た記憶。それは極一部のヴァンパイアが持つ能力とされてる。主にαのヴァンパイアだが、その多くは王の血縁である者か、または王の眷属かだ。そしてアキトは後者、王の眷属に部類される」 「やっぱあんたがそうなんだ? ミハイルさんも様付けで呼ぶし、あんた自身の紹介でも『ルシフェル』って言ってたもんな。覗いた記憶でも王の名前はあんたと同じだったから、もしかしてとは思ってたけど」 「そこはあまり気にするな。別に王であろうがなかろうが私は私だ。――で、問題はその能力だ。基本的にはアキトが望めば、吸血対象の記憶を覗くことが出来る。視たい記憶を選ぶ事は出来ないが、経験上から言わせて貰えば対象の印象に残った新しい記憶か、または対象が一番記憶に残っているもののどれかだ」 これだけ聞いてしまえば例え記憶を覗くことができたとしても、覗きたい記憶を選べるわけではないから、得たい情報を必ず得られるとは限らない話になってくる。 偶然にしてもアキトは、ルシフェル達が望む情報に近いものを引き当てたから良かったものの、全く違う記憶を覗く可能性だってあったのだ。それに気になる点としては、後者の『一番記憶に残っているもの』という話。それは、 「――トラウマとかも含まれるのか?」 「だろうな。私がアキトを吸血し記憶を覗けば、まあ私が両親を殺した時の記憶だろう。お前がそれ以上の事を経験していなければの話だが」 なんとも分かりやすい話だ。頭の中で改めて整理する必要すら感じない。要は吸血対象がこれといったトラウマを抱えていなければ当たりを引くことができるのだろうが、トラウマを抱えている場合、または暗い過去を持っていた場合などは当たりを引ける可能性は極端に低くなる。 対象のそれらを知りたいのであれば話は別なのだろうが、それは物好きのすることだ。
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