第七章 ヴァンパイアの秘密

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「恐らくはアキトが聞いた声と、私の眷属である男は同一人物だろう。解放軍を仕切るにはそいつしか有り得ない。ヴァンパイア達の人望も多く持っていたようだしな」 聞いたことがある声、それさえ思い出せればいいのだが。自分だけ聞いたことがある声なのか、レフも知っている声なのか。それすらも思い出せない。けれど、あの声は絶対に知っている。その確信だけは不思議と持てるのだ。 「それは分かった。次の質問だが、亀裂の原因である共存派。お前とミハイルは本当に共存を望んでるのか?」 「それは僕も同意見です。正直な話、信じられない」 両親を殺されてる身としては、到底信じきれる話ではない。 そうでなくても人間達の間でヴァンパイアという存在は驚異的存在として見られ、敵以外の何者でもない。だからこそ、ヴァンパイアを崇高する人間を異教徒と呼び、ヴァンパイア狩りの専門部隊が作られた。 今更共存したいと言われて、じゃあ共存しましょうになる筈がない。それにヴァンパイアの食事は血液だ。それで沢山人間が殺されているのに、どの口がそれを言うのだろう。解放軍である改革派の気持ちしか分かる気がしない。 「そう言われるのも無理はない。信じれる方が頭を疑う。だが、私は本気で共存を望んでいる。それはミハイルも同じ筈だ」 「証明しろと言われれば……? 確たるものがなければ、どんなに口で言おうが俺達は信じない。俺達だけじゃない。信じる人間は一人も出てきはしない」 「証明か……」 レフの言葉は強く、証明できるものを提示することを求める。その姿にアキトは圧倒しながらもルシフェルの様子を伺えば、ひどく考え込んでいる。 姿勢は前のめりになり、交差し合った指が不規則に動かされる。そしてその視線は一点を見詰めていた。 答えが出るまでの間ゆっくりと待とう。そう思ったのだが、 「子供」 一言、そう言葉を口にした。
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