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しかし紅茶の味は分からない。ダージリンか、アールグレイの二択だとは思うが、どちらの味もしない為、飲んでいる感覚ではお湯を飲んでいる気分だ。
試しにジャムだけを口にし、味を堪能してみることにする。
「ん……」
このままのが美味しい。薄まる事の無い素材そのものの味を感じ取れて、しつこいくらいの甘みが広がる中に、微かに感じる酸味が後を引く。
甘味を強く引き立てる味にはストロベリーが使用され、酸味を出す為に使用されているのは、ラズベリーにクランベリーの類だろう。数あるベリー系を合わせて作られたジャムは酷いくらいに美味しい。そしてそれと同時に、甘味以外である酸味を感じることが出来てることが嬉しい。
「どうだ……?」
「僕はジャムだけ食べてる方が好きです。紅茶の味はしませんから」
「そうか。そうなると俺には、お前程の力はないってことか」
どこか残念そうにレフが言うものだから「強い力が欲しかったんですか?」と訊ねてみれば「どうせなら」と返ってくる。
レフはどこか力に拘っている節がある。それはレフの目的の為には力が必要、そういうことを意味している気がする。
それはアキトにも分かる感情だ。ヴァンパイアとしての身体を手に入れた今となっては、復讐を果たすためには得でしかない。どんな怪我を負ってもすぐ様回復する身体など、殺し合いとなり相手がヴァンパイアであれば必要不可欠だろう。
――しかしレフは違う。見ている限りではレフの目的が復讐でないことは分かる。それならばなぜ、そこまで力を求めるのだろうか。
「……レフ大尉の目的ってなんですか? 僕みたいに復讐、な訳ないですよね。そんな感じしませんし」
「……そうだな。復讐じゃない事は確かだ。俺の目的、それは――」
ようやく、ようやく教えて貰える。そう思ったのは束の間だった。
まるで続きの言葉を言わせないとばかりに、勢い良く部屋の扉が開け放たれたのだ。その音に驚き二人揃って視線を扉にへと向ければ、そこに佇むのはソフィアであった。
急いで来たのか肩を揺らして呼吸をし、アキトを見てレフを見る。そうすれば、カツカツとヒールの音を鳴らして近づき、なにかを察したレフが立ち上がれば、そのレフの胸の中にへとソフィアは飛び込んだ。
ぎゅっとレフを抱き締め、レフもまた小さなソフィアの体を抱き締め返していた。
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