第八章 灰色の欲望

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「勝手だとは承知していました。ですが俺は貴女に助けられた身です。それをちゃんと返したかった。その為に俺に出来ることをと考えた時、この城で俺に出来ることはないだろう、そう思いました。心強いミハイルもいて貴女は護られている。それならば、ミハイルが傍で貴女を護るなら、俺は外から貴女を護ろう。そう決めたんです。ソフィア様の身体を治してあげると約束もしましたから」 レフはソフィアを甘やかすかのように微笑み、手を伸ばして長い髪の毛に触れる。 こうして見ていると、少しだけ兄妹のように映る。髪の色が似ているからか、どちらも美男美女だからか。どちらにしても、二人とも『綺麗』という言葉がひどいくらいに似合ってしまう。 アキトが呆然と二人のやり取りを眺めていれば、レフの次の行動でアキトは思わず、ジャムを食べようと手にしたジャム瓶を落としかけた。いや実際に落としたのだが、ギリギリでキャッチした。 レフは優しくソフィアの髪を手でといて撫で、優しく掬い、――髪の毛にキスを落としたのだ。 「れ、レフ……? どこでそんなの覚えてきたの」 ソフィアにとっても予想外の行動だったのか、動揺するように質問をする。レフはそんなソフィアに微笑みを浮かべ「元気そうですね」と言葉を掛けてみせた。 からかうような意地悪な笑みを口元に浮かべながら。 「おやおや? レフ大尉駄目ですよ? ソフィア様に手出しちゃ」 くすくす笑うように登場し、アキトの時と似たような言葉を吐いたのは言うまでもなくミハイルであった。 開きっぱなしだった扉から、ひょっこりと顔を覗かせ手をひらひら振っている。
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