第八章 灰色の欲望

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「それはこっちの台詞だ。ソフィア様の警護隊だのと言ってるが、それがお前じゃ信用ならない」 「相っ変わらず失礼なガキですねぇ」 ミハイルの表情と言葉が全く合っておらず、ジャム瓶の蓋を開けながらアキトは苦笑いを浮かべた。 そんなミハイルの宥め役を買って出たのは、後から部屋に入ってきたルシフェルだ。子供扱いするようにミハイルの頭をくしゃくしゃに撫で、一言「大人になれ」と言葉を掛けたのだ。それに対しミハイルは恥ずかしがるように頬を薄く桃色に染めて、瞳を大きくし、 「ルシフェル様っ私は大人ですっ! いつまでも子供扱いは止めてください」 「私からしたら子供だろ。お前が赤子の頃から知ってるんだ。むしろ私の子供みたいなものだ。見ろ、そんなお前にとったら、ソフィアも大尉殿も子供じゃないか」 「そう、ですけど……」 「まぁ! ロシアンティーじゃない?」 紅茶を飲まず、ジャム瓶から小皿にへとジャムを移していれば、周りの空気を読まずにソフィアが嬉しそうな声色で話し掛けてきた。 アキトの隣に腰を下ろしニコニコと笑顔を浮かべている。一気に注目の的になったアキトは額に冷たい汗を浮かべながら、上手い言葉が出てこずたじたじになっていれば、ソフィアはにっこりと笑って、 「アキトさんもロシアンティー好き?」 「ぼ、僕はジャムの方が好きです。……このジャム凄く美味しいですよね」 「まぁっ、ふふ、レフみたいなこと言うのね」 アキトの返答にソフィアは両の手を合わせ笑顔で話してみせる。その言葉にアキトが「そうなんですか?」と質問をすれば、それを聞いていたレフはミハイルとの口論を止め、強引にソフィアの隣に座り「ちょっと待ってください」と、笑顔で話そうとするソフィアを制した。 「ソフィア様、余計な事は言わないでください」 「まあ、余計ったらなによ。余計なんかじゃないわ。私はね、アキトさんにレフのこと知ってもらいたいのよ」 「俺の、こと……?」 「そうよ。だってレフはお友達がいないじゃない? せっかくアキトさんが居るんだもの。一人でもいいから、レフには唯一無二のお友達を作って欲しいの」 「いや、でも……俺が良くてもアキトが良いかは知らない。それに俺は友達なんかいらない」 拒絶に似た反応を示すレフは、二人から視線を逸らしてしまう。そんなレフの様子を見てもソフィアは変わらず笑顔のままであり「もぉ、子供なんだから」と口にしてしまう程であった。
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