15章 虎視眈々

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心地好い夜風が吹いていた── そこら中にフィルムのケースが散乱している部屋で似たようなポーズを何度も取らされる。 高級ホテルの最上階、スイートルームを貸しきっての撮影。 ゴールドシャンパンカラーのシンプルなマーメイドドレスを着せられてタキシード姿のマリオとベランダに出て夜景を背に向かい合う。 今回受けた高級ウィスキーのポスター取りはそう激しい動きが無くて助かった。 あたしはホッとしながら撮影に挑んでいた。 向かい合うマリオは眉を動かして微笑みかけてくる。タキシードにウィスキーはやっぱり日本人には似合わない。 ビシッと決めてロックグラスを回す仕草はマリオの大人な色気にピッタリだと思った。 「これが終わったら約束のやつ──…行く?」 「約束?」 聞き返したあたしにマリオはふっと笑う 「“肉の塊”──…どう?」 「ああ!」 そういえばそんな話したっけ… 肉の塊か… この人なら美味しいところに連れていってくれそう── むくっと食の欲が沸いてくる。 でも夏希ちゃんから昼間電話合ったしな… もしかしたら家で待ってるかも知れない── 丁度、撮影の打ち合わせ前に夏希ちゃんから掛かってきた電話… 慌てて冷たく切った事が少し気掛かりだった。
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