15章 虎視眈々

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・ 舞花は泣きながらも黙ってはいなかった── 「だってっ…あんな普通のっデカイだけの女なんてっ…なんで聖夜が付き合ってんのかわかんないっ!」 「舞花にわかる必要ない」 晶さんの良さは俺だけ知ってればいい── 他の奴だって… 誰一人、晶さんの良さに気付かなくていい── 「ねえ、舞花」 俺はシートの背もたれに手を掛けて身体ごと隣の舞花に向き直った。 「舞花が売れるのに俺、十分貢献したんだからさ──…頼むから俺のこと諦めて?」 「──…っ…」 「てか、諦めろ」 「いやっ…無理よっ」 なに!? 「あんなに好きって言って抱いてくれたじゃないっ…」 「……っ…」 「絶対に無理っ…嘘なんて思いたくないっ…」 「………」 みっともないくらいにしがみつく舞花になんだか晶さんを想う時の自分が重なった…… 晶さんから見た俺もこんな感じ何だろうか── なに言われても なにをされても好きで… 好き過ぎて── 別れるなんて微塵も考えられず、離れていきそうになると必死でしがみつく… 「舞花…」 俺は頭を抱えてため息をついた。 「俺、あの人ほんとに大事だから…舞花は仕事で付き合っただけで依りなんて戻らないから諦めて──」 うつ向いたままの舞花に頼み込むように懇願した。 「楠木さん、舞花送って…俺、事務所いく」 「わかったよ」
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