1話 わたしは悟りにほど遠い人間です…

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 『小坊主(こぼうず)』こと私『楽念(らくねん)』は『楽楽寺(らくらくじ)』で、日々、人々の幸せを願うお坊さんであります。  嬉しいことに私が務めを行う『楽楽寺』はシフト制ではありますが、毎週2日の休みがある時代にマッチしたお寺でありまして、本日休みの私はこれから巣鴨にある珈琲店に向かう所でございます。  『あっ』いけません。つば付きの『カープ』帽をかぶらなければ、近頃スキンヘッドが流行っているようでございますが、まだまだ世間さまの目は『坊主頭』に厳しゅうございます。  巣鴨に着いた『小坊主』さん、目的の珈琲店で十分にコーヒーを堪能した後、帽子をとって休んでおりますと、1人のお婆さんが近づいてきます。そして  「スゥー、スゥー」  おかしいですね。頭がヒンヤリし気のせいか服が濡れておりますが…おや、お婆さんが私に手を合わせて拝ん《おがん》でいるようですね…  「これこれ、お婆さん、私は徳のある『お地蔵様』ではございませんので、頭に水をかけるのは止めていただけますかな…」  「あぁ…びっくりした…お坊さまだったのですね…これは申し訳ないことを…」  
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