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「捕まえろ! ミス・ゲシュタルトだ!」
大きな商人の家の周りを何人もの警邏隊が取り囲み、更にその周りに街の人々が集まっている。
彼らの視線は、商人の家の屋根の上に向けられている。そこにいるのは、大きな袋を持った一人の少女だ。彼女は顔の上半分を猫の仮面で覆い隠し、ペチコートの代わりに膝丈のキュロットと鳥籠のようなクリノリンを穿いた上に膝丈のローブ・ア・ラ・フランセーズを纏っている。
彼女が袋の中から紙の束を取り出し、屋根の上からそれを撒いた。
「警邏隊の皆さんごきげんよう。
これは私、ミス・ゲシュタルトからのプレゼントですから受け取ってくださいまし!」
ひらひらと地面に落ちた紙を見て、家の主である商人は顔を青くする。次第に、警邏隊の視線もその商人の方へと集まっていった。
商人がミス・ゲシュタルトを指さして叫く。
「こんな事よりも、今はあいつをなんとかしろ!
盗みに入られた私が被害者なんだ!」
撒かれた紙は、この商人が今までに詐欺を繰り返して財を蓄えてきた記録が綴られている物だった。
「あっはっはっはっは!
それではみなさん、ごきげんよう」
笑い声を上げて、ミス・ゲシュタルトは家々の屋根の上を跳ねて姿を消す。後に残ったのは警邏隊に囲まれた商人と、街の人々の歓声だった。
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