#01.お持ち帰り、しちゃいました。

11/24
前へ
/74ページ
次へ
「……ひぇ~。こりゃ、ひでーなぁー。ひとりでやけ酒かよ」 「あははは……」 「来年はいっしょにいるから。美亜の誕生日、絶対、いっしょに祝うから」 「うん、ありがとう……」   いつもだったら、うれしすぎて、すぐにでも彼の胸に飛び込んでただろう。  だけど、今は素直によろこべない。  彼を裏切ってしまった後ろめたさと後悔から、胸が押しつぶされそう。  なんで、こうなっちゃったんだろう。  (さび)しさから?  レストランに取り残されたから?  ()()に同情しちゃったせい?  酔った勢い?    ううん、全部偶然が重なっちゃったんだ。  寝室のゆらゆらと揺れるカーテンから、うっすらと()()のシルエットが浮かび上がる。  目の前に彼がいながら、数メートル先のカレを思う自分がいた。  カレに出会ったのは、きのうの夜────。
/74ページ

最初のコメントを投稿しよう!

43人が本棚に入れています
本棚に追加