#01.お持ち帰り、しちゃいました。

14/24
前へ
/74ページ
次へ
『もう飲んじゃったの? 美亜、ペース早くない? ま、ここ、彼らのおごりだって言うし、今日はぱあっと楽しんじゃお。たまには羽目(はめ)外しちゃえ』 『……でも、なんか気が進まない』 『えっ、そお? 今日()なかなかのイケメン(ぞろ)いなんだけどなぁ』 『それで、アズサのどういった知り合いなの?』 『別に知り合いってほどじゃないよ。今日、食堂で、それもたまたま座ったテーブルの隣に彼らがいたってだけ。ほら、一番奥の彼、サクヤくんっていうんだけど、なんか彼女にフラれちゃったみたいなんだよね。今日は彼を元気づけさせようってことで、“レッツ合コン!”ってことになったの』 『なにそれ、なんか(かる)~。っていうことは、みんな同じ大学?』 『そっ、理学部らしいよ。どお、気になる人いた?』 『いない』 『えぇ~っ、悲しいこと言わないで。とにかく楽しも! 運良ければ男ゲットできるかもしれないし、()()()がんばろ!』 『だね』  空のジョッキを片手に、気づけば周りはカップル成立しつつあった。  ついさっきまで私と話していたアズサも、お目当ての男子の隣をキープしちゃってるし。  私だけが浮いちゃってる……。  私が彼氏持ちだってことは、誰も知らない。  別に秘密にしていたわけでもないし、彼に言われたからでもない。  たまたま付き合った相手がモデルとして成功して、(またた)く間に有名になっちゃったもんだから、言えなくなっちゃって。  ほんの数年前まで本屋の店員さんだったのになぁ。  今はちょっと遠くに感じる……。 ***
/74ページ

最初のコメントを投稿しよう!

43人が本棚に入れています
本棚に追加