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第一章 出会いは運命のはじまり
一
天気は快晴、太陽がにぶく地面をてらしている。その道を少年は息を切らせながら必死に走っていた。
一本だけ立ち上がっている頭頂部付近の髪が動きにあわせて上下にはねる。髪色は蒼に近く、ともすれば黒くもみえた。
長いローブを足にまとわりつかせながら、駆けていく。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」
小さなからだで懸命に前へと進む。
その後ろからは彼をおいかけるようにして風景に似つかわしくない銃声が轟いた。
――アンジー歴にして1839年、トーラルは2番目におおきな首都のシンシリー国。彼、いや彼らがいる現在はそういうところだった。
「っは、は、はっ」
銃声の数が増え、少年を後ろからおいかける。逃げる彼もまた、怯えながらも死にたくない一心で走り続けた。
「わ、っ!」
しかし、すぐ横を銃弾が駆け抜け少年は思わずしゃがみこんだ。幸いにして、植木鉢の影であった。
「大丈夫ですか?」
可愛らしい高めの少女の声が少年をいたわるように気遣った。
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