一章

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「きゃっ」 勢い余って何もない廊下で(つまづ)きよろめくと、一彬が広い胸でそっと受け止めた。 すると彼のダークスーツから海を思わせる碧い匂いが香る。一彬の香水の香りは、出会った頃から変わらない。 「すみません……」 「……今17か?」 「18です、次の誕生日で」 「高校を卒業する歳だな……」 一彬は華生を抱いたまま頭を撫でる。子ども扱いされているのだとしてもそれはそれで嬉しい。華生は喉を撫でられている猫のようにじっとしている。
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