四章

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鑑田と一彬は顔を強張らせた。 「唄子」と呼ばれた彼女はついさっきまで音楽を楽しんでいた華生ではなかった。呼吸を乱し、冷や汗で顔を濡らし、目は瞳孔すらも見開く勢いで男性を見上げている。 「失礼、華生ちゃんだね。お母さんそっくりでわからなかった。まるで生き写しじゃないか! こんなところで何をしてるんだ? ずっと探していたんだよ!」 男性は驚きと安心が混じったような顔で彼女を抱き締めようとした。 「あ、あああああ!」 華生は彼の手が一瞬触れただけで気が狂ったように叫びながら手を弾く。 男性がぽかんとした顔で華生を見下ろす。華生は一彬の後ろに隠れて小さくなった。 鑑田も眉間に皺を寄せ、彼らを何回も交互に見る。
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