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「華生ちゃん、どうしたんだ? 具合でも悪いのか」
男性が腰を屈めて華生の顔を覗こうとすると、華生は声にならない悲鳴を上げて彼と距離を置く。
「!」
ついに一彬が華生の身体を自分の身体の中に納めて一歩引いた。その刺すような眼はまるで羅刹鬼だった。
「失礼……妹は男性嫌いでして、私以外の男には触れようとしないのです」
「妹……? 貴方の?」
男性の全く腑に落ちてない顔を放置して、一彬はそのまま踵を返す。
「鑑田さん、申し訳ないが華生の具合が悪いのでお父様へのご挨拶はまたにさせていただく」
鑑田の返事も聞かずに、一彬は華生の肩を抱いて会社の正面玄関を飛び出した。
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