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「ええ、一彬兄様と一緒だったから」
華生の何気ない一言に、鑑田の顔が曇った。
「また、一彬さんか」
華生が息を呑む。
鑑田さんの雰囲気が、いつもみたいに穏やかじゃない。
彼はジーパンのポケットに手を突っ込みながら静かに問い掛ける。
「華生さんさ、文化祭のとき俺が手を握ったのを覚えてる?」
「……そういえば、そうでしたね」
「あのとき、華生さん一彬さんの姿を見るや否や俺の手を離して行ったんだ」
華生は手を口に当てた。
「!? そうでした?」
華生の心底悪気なさそうな反応に、鑑田はさらに眉根を寄せた。
「野木専務と会ったときも、迷わず一彬さんにしがみついたね」
華生は少し考えた後ゆっくりと首を縦に振る。しかし内心は飛び上がりそうだった。
よく分からないけど、失礼な振る舞いをしたのだろうか? 婚約を、破棄されるのだろうか?
「!」
鑑田が少し強く華生の肩を掴む。
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