四章

34/34
前へ
/264ページ
次へ
……これが所謂、キスマークだろうか。 その右手で、思い出したように唇に触れる。 望まれる反応を、私はちゃんと鑑田さんに返していただろうか? 不快に感じられてはいないだろうか? グレーの石床に黒いしみがぽたぽたと落ちたことに気付き、華生は自分の両目に手を被せた。 涙が零れるのは……「好きだ」と言われたから? 嬉しかったんだ、私は。ならば泣いたって……構わない。 これは初めてのキスがあの人で良かったと思う、感激の涙なのだから。
/264ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1331人が本棚に入れています
本棚に追加