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「正気も何も、彼女を気に入っただけの話だろう。華生嬢もよくやったじゃないか」
「何を寝惚けたことを言っているんだ!」
急に癇癪を起こす息子を、成親は射貫くように見る。
「何故だ? 決まりかけた契約を反故にするんだ。相応の理由がいる」
一彬は父親のぎょろりとした眼を同じ眼で見つめ返すが、ついに根負けしたのかばつが悪そうに舌打ちをした。
「……鑑田の会社に行ってくる」
一彬は蹴破るように社長室の扉を開け放つ。向かう先は自分の車を停める駐車場だ。
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