五章

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「……野木専務が華生さんを傷付ける恐れがあるから僕との結婚は許せない? そんな理屈は通らない」  一彬の堪忍袋は存外に緩かった。歯を喰いしばりながら鑑田に掴みかかりかける。 「お前! 下手に出てれば!」  鑑田は緩慢な動作で全然下手に出ていない一彬の前に手をかざした。 「話を聞いてください。僕だって馬鹿じゃない。華生さんのあんな怯えた顔見て平気なはずはないでしょう」 「だったら」  鑑田が一彬の言葉を遮る。 「待ってください。場所を移しましょう。ほら、貴方が騒ぐから僕たちは注目の的だ」 エントランス中の社員が皆、いきり立つ一彬らに視線を向けていた。一彬は仕方なく振り上げた拳を下ろし、鑑田の後ろをついて行く。
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