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階段で二階に上がり、何個かあるお揃いの扉の一番手前で鑑田が止まった。
「商談用の部屋ですが、空いているからいいでしょう」
鑑田は息子とはいえ正社員でもない癖に悪びれもせず部屋のドアノブに手を掛ける。
「良いのか、私用で使って」
「良くは無いですが、僕は社長子息なので多少お咎めは緩いでしょう」
鑑田は涼しい顔で商談中と書いてある電子盤を点灯させた。
「気にしないでください、貸しにしておきますから」
一彬をソファに座るように促し、自分も彼の正面にどっかり腰を下ろす。恐らく華生には絶対に見せないであろう強かな眼が一彬を見据えた。
「さぁ話を続けましょう。野木専務について少し話しておきますね、僕も社員として働いているわけではないので仔細がわかるわけではありませんが」
話が長くなるのか、彼は一度深く息を吐く。
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