五章

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「野木専務は、初めうちの下請けの会社で働いていましたが、十年くらい前に社長……僕の父直々に引き抜かれてうちに入社しています。一、二年で幹部に上がって専務に就任したのは半月前ですね」 「社長のお気に入りか」 「そのようですね。プライベートでもよく二人で飲みに()ったりとかしてますよ」 一彬が眉間にシワを寄せる。 「家族はいるのか」 「いますよ。奥さんは父の従姉妹で子どもも女の子が三人……みんな小学生だったかな」 「実の娘にいかがわしいことはしてないか」  露骨な質問に、鑑田はむしろ挑むように鋭い視線を返してきた。 「ずいぶん非礼なことを聞きますね」 「小学生を妾にしようと思う男だぞ」  さすがの鑑田もギョッとした顔をする。 「それは華生さんのことですか?」 「他に誰がいる」  信じられないな……と鑑田は顔を歪めた。
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