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「おそらくそんなことはありませんよ。僕も年始には専務の一家と顔を合わせますが、お父さんが大好きなようで末の子なんて抱っこをせがんでましたからね」
父親の本性を知らぬことが幸せなのか不幸なのか。
「気味が悪いな」
「まぁとにかく、あの人は会社でも家庭でも優能な社員であり優しい父親である。娘くらい歳の離れた少女、それも姪に欲情するような男だなんて……言っても誰も信じない」
一彬は身を乗り出して要求する。
「しかし、何かあってからでは遅い。他の交換条件はいくらでも受け入れる。だから華生は諦めてくれ」
鑑田の眼は真っ直ぐで濁りなかった。
「何もいりません。欲しいのは華生さんだけだ」
一彬の拳が鑑田の端正な顔を打つ。身体ごと吹き飛ばされた鑑田を、一彬は烈火のような瞳で見下ろした。
「お前、話を聞いていたのか!」
鑑田は打たれたほおに手をやりながら何事も無かったかのようにソファに座りなおす。
「……話を聞いていたからですよ」
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