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翌日、華生は学校の帰りに笹野にお願いして寄り道をしてもらった。
「この辺りは人通りが多いですね」
夕方であることも手伝って老若男女が歩道を飛び交っている。
「そうですねぇ。華生さんの学校は郊外ですから全然街並みが違うでしょう」
車通りも多いのだが、さすがベテランの彼は談笑をしながらもすいすいと道路を進む。
「華生さん、校門が見えましたよ」
「学生さんがいっぱいですね……」
自転車で埋もれた横断歩道は気後れをしてしまう。
「中に入るのでもう少し待って下さいね」
笹野は車を校内のバス停付近まで運ぶとブレーキを掛けた。
「ありがとう、笹野さん」
「その辺で時間を潰して来ますから連絡を下さいね」
「はい、そうします」
華生はスマートフォンを片手に右も左もわからない校内を走り出す。
「人文学部棟……」
幸いにもそれは校門から真っ直ぐ行った先にあるらしく、さほど迷わずに辿り着くことができた。
「華生さん!」
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