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次の日の日曜日、華生は世津子の部屋の鏡台に緊張の面持ちで座る。
「本当はファンデーションなんて要らないんですけどね、華生さんは」
世津子は笑いながら華生の陶器のような肌にパフを当てる。
「そ、そんなことないですよ?」
「だってキメも細かいし、ニキビ一つないもの!」
世津子は嬉々としてほお紅を取り出した。
「やっぱり華生さんはピンクよね!」
「そ、そうですか……」
華生はわからないままにピンクのクリームチークを塗られる。そして同じピンクのアイシャドウ、ペンシルのアイライン、最後に桜色の口紅を塗られると、世津子が「できた!」と声を弾ませた。
「やっぱり素材が良いから化粧が楽しかった。白雪姫みたい!」
「言い過ぎですよ……でもありがとう世津子さん」
華生の桃色のほおは少し赤に寄る。いつもより彩度の高い自分の顔は世津子の言葉ほど綺麗だろうかと心配になった。
「そろそろですね……」
華生はゆっくりと鏡台の椅子から立ち上がる。
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