1328人が本棚に入れています
本棚に追加
華生は一瞬顔を引きつらせたが、ココアのカップをソーサーの上に置き、少しずつ語り始めた。
「一彬兄様は……結婚はしないと思います……少なくとも、自分の意思では」
「……どうして」
「兄様は、下の弘海兄さん、風恒兄様とはお母様が違うのですが、ご存知でしたっけ?」
「いや、歳が離れてるなとは思ってたけど」
「嶋木酒造は一度、事業が失敗して倒産しかかったことがあるそうです。そこで出資していただいたのが、長嶺ホールディングス、弘海兄さん達のお母様はそこのご令嬢なんです」
鑑田の口が大きく開く。
「嶋木社長は……一彬お兄さんのお母様を捨てて今のお母様と結婚したということ?」
華生は「そんなことは」と訂正しようとして言葉を切った。
「……そうですね。一彬兄様のお母様と離婚して、瑛子お母様と再婚したのです」
最初のコメントを投稿しよう!