五章

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華生は一瞬顔を引きつらせたが、ココアのカップをソーサーの上に置き、少しずつ語り始めた。 「一彬兄様は……結婚はしないと思います……少なくとも、自分の意思では」 「……どうして」 「兄様は、下の弘海兄さん、風恒(かぜつね)兄様とはお母様が違うのですが、ご存知でしたっけ?」 「いや、歳が離れてるなとは思ってたけど」 「嶋木酒造は一度、事業が失敗して倒産しかかったことがあるそうです。そこで出資していただいたのが、長嶺(ながみね)ホールディングス、弘海兄さん達のお母様はそこのご令嬢なんです」 鑑田の口が大きく開く。 「嶋木社長は……一彬お兄さんのお母様を捨てて今のお母様と結婚したということ?」 華生は「そんなことは」と訂正しようとして言葉を切った。 「……そうですね。一彬兄様のお母様と離婚して、瑛子(えいこ)お母様と再婚したのです」
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