五章

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「……座りなさい。華生嬢」 瑛子の隣のソファの正面には成親専用のティーカップが置いてある。野木は成親の正面に腰を下ろしており、瑛子の正面の席がきれいに空いていた。とあらば席は叔父の隣しかない。 ……拷問だ。 「……かしこまりました」 華生は出来るだけソファの端の方に座り、叔父と距離を取る。 「おや、よそよそしいねぇ」 「久しぶりにお会いしたからどうしても緊張してしまって。……どうかお許しくださいね?」 気を確かに。今失神でもしようものなら、何をされるかわからない。 笑顔を繕えたことが奇跡だ。決死の思いで野木に顔を向ける華生は、コートすら脱がない。 「……本人も来たことですし、本題に致しましょうか」 成親が瑛子の隣に座りなおす。野木の声は歓喜に震えていた。
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