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まさか契約だからとは言えない。華生は顔に笑顔を貼り付けて切り返す。
「……恐れ入ります。良縁だったもので」
華生は気付く。叔父の目が蝮のように粘着質に絡みついていることを。華生の身体がぶるっと震えると、野木は成親に視線を移した。
「いやはや、本当に有難うございました。実はですね、今日はご相談があって来たのです。こうして……せっかく華生と再会できたのですし、柊聖坊ちゃんの所には私、野木の家から行かせてやりたいと思うのです。いつまでも嶋木さんの家にご厄介になっているのは、華生も気が重いでしょう」
「……あ」
華生の顔から笑みが潮のように引いた。彼女は成親の顔を見ることができなかった。
私を連れて来て無理を言って住まわせてくれたのは一彬兄様だ。恐らく、お父様にとっては私はただの厄介者でしかない。
「嘘でしょ? 華生さんを連れてっちゃうなんて嫌よ!」
瑛子が甲高い声で叫ぶ。
嬉しいと思った。けれど、お母様の感情論はこの場において何の効力もない。
「奥様のお気持ちは感無量です。しかし叔父としてただ姪を養っていただくのも……」
道理はその通りだ。華生はぎゅっと目を瞑る。
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