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一彬がドアを開けた先には、大きな目をした綺麗で優しそうな中年女性と一彬がそっくりそのまま歳を重ねたような男性が立っていた。
「まぁ可愛らしい! 私瑛子、よろしくね!」
「……貴方が華生さんか。一彬から話は聞いている。私は家長の嶋木成親という。これから宜しく」
愛想が両極端な夫婦に戸惑いながらも、華生は出来る限り丁寧に挨拶する。
「初めまして、華生ともうします。住まわせていただきありがとうございます。これからお世話になります。どうかよろしくお願いします。おかあさま、おとうさま」
瑛子は華生に駆け寄って大喜びした。
「『おかあさま』なんて新鮮ね! 嬉しいわ〜華生さん!」
「……何かあったら相談しなさい。華生嬢」
成親はそれだけ言って仕事に行ってしまった。お金持ちだから忙しいんだなと幼い華生は思っていた。
——今思えば、『嬢』と呼び方を変えたのは自分を迎え入れるというサインだったのかもしれない。
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