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瑛子が淹れたカモミールティを飲んだ後、華生は客間まで様子を伺いに向かった。音を立てずに歩みを進めていると、ちょうどトイレの後ろでネットリとした声が降った。
「七年前とは大違いだ、華生ちゃん」
華生は秒でハンカチで手を拭いている叔父と距離を取る。狂気を思わせる道化師のような笑顔は素の表情だ。華生は身震いしつつも、呼吸を整えながら野木を見据える。
「本当に、美しくなった。あの時と違って、身体も丸みができて随分……」
叔父の手が伸びてきて華生は声を張り上げた。
「触らないで触らないで触らないで!」
その時、華生の前に広い背中が割って入り、ふわっと海の香りが鼻を掠める。
「何をしているんだ!」
怒鳴りながら華生の前に立ちはだかったのは一彬だった。野木の表情がロボットのような造られた笑顔に戻る。
「何もしていませんよ……一彬さんですね。貴方とお話しをしたかったのです。まるで『妹』のように可愛がっていただいたみたいで」
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