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世津子は華生を自室に連れてくると、取っておきのおやつを取り出して紅茶を淹れてくれた。
「華生さん、良かったら食べてくださいね?」
「え、ええ。ありがとう……」
申し訳ないがとても食べる気分にはならない。華生は仕方なく紅茶にだけ口をつけ、そのまま呆然と椅子に寄りかかっておく。
一時間ほど経ったころだった。
「華生はいるか」
一彬が部屋の向こうから呼び掛ける。華生も部屋から返事をした。
「はい、います」
一彬が口を開くまでに少し時間があった。
「……客間に来い」
「わ、わかりました!」
華生が世津子の部屋のドアを開けると、もう一彬は先を行っている。
いつもなら彼の隣まで走っていくのに、今日の彼女はそれができない。
……今の兄様は、背中が遠い。
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