六章

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六章

ことは数時間前に遡る。瑛子(えいこ)が座っていた席にそのまま座った一彬(かずあき)は、野木(のぎ)を蛇睨みした。 「何の用で来られたんですかな」  野木はいけしゃあしゃあとわざわざ起立して、恭しく頭を下げる。 「まずは御礼を。この度は華生(はなお)を」 「何の用かと聞いたんですがな、日本語がわかりませんか!」 「一彬、あまり大人気ないことを言うな!」  声を荒げる一彬を成親(なりちか)が叱るが、彼は彼で表情まで息子とそっくりだ。 「息子が少々失礼した。華生嬢を野木の籍に戻したいということでしたな」
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