六章

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そして今に至る華生は、聞こえてないのかと錯覚するくらい反応が無かった。 「華生……」 心配した弘海(ひろみ)が呼びかけてきて、やっと「あ、あぁ」と場違いな声を出す。 「結婚ですよね。 私と鑑田さんが、1月1日。……来月ですね」 「まだ気持ちの整理が付いてないだろうが、現状それ以外に野木から逃れる方法がない。受け入れてくれ」 一彬の淡白な言葉が、華生の小さな身体に容赦なくのしかかってくる。 「わかりました。……実感が湧きませんね。花嫁修業、間に合うかしら。……なんだか落ち着かないから、休ませていただきますね」 華生はペコリと一礼して、静々と客間を出て行ってしまった。終始渋い顔をしていた瑛子(えいこ)が、安堵のため息を吐く。 「……受け入れてくれて良かったわ。急すぎるから動転しちゃうわよね。だけど鑑田さんはいい子だから、華生さんを守ってくれるわよね?」 返事をしたのは弘海だった。 「そうだね、きっと……」
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