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そして今に至る華生は、聞こえてないのかと錯覚するくらい反応が無かった。
「華生……」
心配した弘海が呼びかけてきて、やっと「あ、あぁ」と場違いな声を出す。
「結婚ですよね。 私と鑑田さんが、1月1日。……来月ですね」
「まだ気持ちの整理が付いてないだろうが、現状それ以外に野木から逃れる方法がない。受け入れてくれ」
一彬の淡白な言葉が、華生の小さな身体に容赦なくのしかかってくる。
「わかりました。……実感が湧きませんね。花嫁修業、間に合うかしら。……なんだか落ち着かないから、休ませていただきますね」
華生はペコリと一礼して、静々と客間を出て行ってしまった。終始渋い顔をしていた瑛子が、安堵のため息を吐く。
「……受け入れてくれて良かったわ。急すぎるから動転しちゃうわよね。だけど鑑田さんはいい子だから、華生さんを守ってくれるわよね?」
返事をしたのは弘海だった。
「そうだね、きっと……」
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