六章

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 椅子の足が乱暴に擦れる音がした。 「あ?!」  一彬が華生の肩を乱暴に掴み壁に押しやり、噛み付くように唇を塞ぐ。 「う……っ……んぅ……」  苦しい。けど、離したくない。夢中だった。華生は既に目を閉じていて、一彬の首を手繰り寄せながらその唇を受け入れる。 「!」  無意識に一彬の唇をこじ開け舌を差し込んだようで、驚いた彼が唇を離した。 ……はしたなかっただろうか。  華生が顔を赤くしてたじろぐと、一彬は要求に応えるように口を半開きにして顔を寄せたので、遠慮なく舌まで彼を味わった。  互いに呼吸の限界がきて、名残惜しくも顔を離して見つめ合う。息を整えた一彬の開口一番は、恨み言だった。
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