六章

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行為が終わると、二人はそのまま横たわってうとうとと微睡んだ。特に華生は起き上がる気力もない。ようやく気怠そうに壁側に寝返りを打つと、一彬が彼女を引き寄せ背中に唇を寄せた。 「いたっ」 華生がびくりと跳ねると一彬の手は彼女の胸を弄び始め、振り返った彼女の唇を深く吸った。 「……ぁあっ!」 華生は自分の口から出た嬌声に驚く。自分の声とは思えないほど、いやらしかった。 恥ずかしい……。 華生は一彬の胸に顔を隠す。すると後頭部から顔をぎゅっと押さえつけられた。 「その声が嫌いな男はいない」 自分がまんざらでもなかった癖に、さも一般論であるかのようにしか言えない一彬の甲斐性の無さは悲しい。 「……月が綺麗だな」 華生の頭の上から一彬の呟きが聞こえる。普段はそんな情緒的なことを言う彼ではないので、どれほどの美しさだろうかと気になった華生はもぞもぞと顔を出す。 満月だが薄靄のせいで輪郭がぼんやりとしており、お世辞にもそんなに綺麗な月ではない。 「ふふっ」 華生は一彬の腕の中で含み笑いを漏らした。 「何がおかしい」 一彬が不服そうな顔で彼女を睨む。 「いいえ……ただ、『愛してる』って言われたみたいで嬉しくて」 常に言葉足らずの一彬にそんな甘い言葉は求めない。せがんだって言ってはくれないだろうと華生は諦めている。 しかし一彬は意外な機転を利かせてきた。 「他の男に嫁ぐ女でなかったらな……」 ……今まで、これほど胸が満たされたことがあっただろうか。 華生にとって彼の言葉の裏を読むのは容易い。彼女は一彬の唇に水音を立てると、目一杯幸せそうな顔で微笑んだ。 「『死んでもいいわ』」
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