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次の週の日曜日、鑑田の従兄弟の結婚式があった。華生は真新しいパーティドレスに袖を通す。
「柊聖さん、背中のファスナー上げて貰えますか?」
「下げる方が好きなんだけどな」
夫は冗談を飛ばしながら華生の背中のファスナーに手を伸ばした。
「その色のドレス似合うね、お店で見た時は青もいいかなと思ったけど」
淡いピンク色のドレスは、色白の華生の肌によく映える。
「ありがとうございます。悩んだんですけど青は新婦の方がお色直しで着られるみたいだったので、こっちでよかったです」
今時あまり気にする人は少なくなったとは聞くが、従兄弟の嫁が新婦とカラードレスが被ると少々拙い。
「華生さんは何でも似合うからな」
鑑田は真顔で妻を褒める。当の華生は「大袈裟だな」と思っているが、いつものことなので「そうですか?」と適当にあしらう。
ドレスのファスナーが肩まで上げられた。鑑田は一番上のホックを止めて首に軽くキスをした後、耳の後ろに顔を持ってきて低い声で命じる。
「……今日は絶対に、俺の側を離れないこと」
「……わかりました」
その言葉が美しい妻を持つ男の嫉妬心だと思うほど、おめでたい華生ではない。
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