七章

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二人が式場の受付を済ませると、鑑田の親戚筋の男性が陽気に声を掛けてきた。 「柊聖くん、久しぶりだなぁ!」 「幸夫(ゆきお)おじさん! ご無沙汰してます」 「今大学生だったかな? 男前になったじゃないか」 「そうですか? おじさんには負けますよ」 幸夫おじさんは鑑田の半歩後ろで佇む華生を見て眉を上げる。 「もしかしてこちらのお嬢さんが……」 鑑田が自慢げに微笑んだ。 「はい、妻の華生です」 「初めまして、主人がお世話になっております」 淑やかに頭を下げる華生に、幸夫はため息を漏らした。 「はぁこれは、途轍もなくお美しいじゃないか!」 「そんな……お褒めいただき恐縮です」 「そうでしょう? 僕の自慢の妻です」 恥じらう華生の横で鑑田は臆面もなく胸を張る。 「いや、本当にこんな別嬪そういないじゃないか羨ましい! ところで柊聖くん、君たち式はしないのか?」 「僕がまだ学生ですからねぇ……籍はもう入れてますけど、やっぱり僕が社会人になってお金を稼げるようになってから挙げさせていただこうと思ってます」 「流石しっかりしてるねぇ君は! まだ若いのに感心な夫婦だ!」 幸夫は上機嫌に鑑田の肩を叩くと別の客を見つけて挨拶に向かってしまう。鑑田は落ち着くと会場を見渡して言った。 「華生さん、あっちでウェルカムドリンクを配っているよ」 「本当? 何があるかしら」 二人がそちらに向かうと、ハレの日にはそぐわない厳格なオーラを放つ男がカクテルを嗜んでいる。
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